『キジサク』…ご存知ですか?
朝日新聞社、時事通信社、日刊工業新聞社の三社が4月1日にオープンを予定している各社提供の記事や写真をウェブ上で検索、閲覧できる有料のデータベースサービスです。
註:エイプリルフールだからと云って、嘘、ではないですよ。
何やら「新s(あらたにす)」と同じ匂いがフガフガしますね。
このキジサク、詳しくはITmedia Newsの『朝日・時事・日刊工が記事DBに参入「信頼性ある情報を有料で」』をご覧頂くとして、実に“メディアらしい”発想ですね。
ちなみに、有料での記事DBサービスは、日本経済新聞デジタルメディアが運営する「日経テレコン21」やジー・サーチが運営する「G-Search」等が既にあります。
今更、同じ様な有料DBサービスを提供する上で、競合サービスに勝る箇所は「思い切った価格」にあるとの事です。
キジサクでは、月額基本料金がライトコース6300円(8400円分の利用料が含まれる)、が6300円、ミドルコース1万5750円(3万1500円分の利用料が含まれる)との事。1契約当たり3名迄同時に利用可能だそうです。
記事検索1回当たり10.5円、1記事の本文閲覧毎に52.5円〜315円。朝日新聞社「知恵蔵」のデータ閲覧は別途月額315円。時事通信社提供の官公庁情報や専門7誌のデータは見出し1本当たり5.25円。
三年後に年間売上高5億円、導入社数5000社を目標にしている、との事です。
註:日経テレコン21は月額基本料8400円、見出し1本当たり5.25円〜、記事本文1本当たり52.5円〜。G-Searchは法人契約の場合、基本料金が年額3150円、見出し1本当たり5.25円〜、記事本文1本当たり52.5円〜。
果たして、この携帯電話の様な定額従量制が“思い切って”いるかどうかは兎も角、この程度のサービス(コンテンツ)でリリースしてしまう処が凄いです。
弊社でこの企画が私の処迄上がって来たとしたら、一昨日来やがれ、と一蹴してしまう事でしょう。それ以前に、この企画が上がって来てしまった事に嘆いてしまうのではないでしょうか。
確かに、営業力があれば目標法人数を達成する事は出来るかも知れません。
しかし、日経テレコン21の既存ユーザーが乗り換えるとは考えられません(併用は有り得るでしょうが)。恐らくは、士業関連か付き合いか、特定分野に特化した法人、情報リテラシーの乏しい法人くらいしか乗って来ないのではないでしょうか?
朝日新聞社デジタルメディア本部マネージャーによると、
「GoogleやYahoo!検索で十分という意見もあるだろうが、検索で得られる情報は、自分で確かさを確認する必要がある。新聞社の記事ならソースをきっちり保証できる」
との事。
しかし、皮肉な話ですが、私がキジサク発表記者会見記事のネット上での初見はYahoo!です。しかも、そのトピックスですよ!
後、新聞社ならざるソースから見聞きしたのです。一体、どう云う事なのでしょう?
冒頭が長くなってしまいましたが、この不可解な有料DBサービス「キジサク」について少しお話させて頂きたいと思いますので、もう暫くお付き合いを。
情報、と云うものは大変、貴重です。
そのデータベースを有償で提供する、ここ迄は分かります。
しかし、もしWikipediaの閲覧が有料の会員制であったとしたら、これを覗くでしょうか?
残念ながら、サイトそのものの存続が危ぶまれる程、ユーザー数は激減する事でしょう。
では、キジサクは何を以てして有償DBサービスを展開出来るであろう、と考えているのでしょうか。
「インターネット上では無料で閲覧できる情報も数多いが、「(インターネット上の情報は)その情報が確かであるかどうかを自分で確認しないといけない。きちんとした情報源を持つものを、保証して提供するところにコンテンツの価値がある」(朝日新聞社)との考えだ。また、検索ごとに課金するのは「膨大な量の検索をされるとシステム負荷がかかるため」(朝日新聞社)と説明した。」
CNET「朝日新聞らが有料データベースサービスを開始、月額6300円は「思い切った価格」」より一部抜粋
不思議な意見です。
Web上で展開するサービスの筈なのに、インターネット上での情報に信憑性が乏しい、と語っています。且つ、ソースを保証して提供、つまり、自サイトの情報が正しい、と暗に云っています。
情報リテラシーを身に付ける事こそが、これからのインターネット活用に問われている昨今、明らかに逆行した意見、と思われます。
情報を扱うに際し、第三者に保証を求め得るのではなく、その情報を如何にユーザー自身が選定し、解釈するか否かが重要、と云う事実を理解してはいない様です。
そもそも、情報と云うものは、過去においても自分自身で判断するものであり、情報そのものが操作されたり、制限される事の方がより問題なのです。
バックナンバーを一定期間で削除する事自体が奇っ怪であり、閲覧制限を掛ける事の方にこそ、疑問が残ります。
膨大な検索がシステム負荷を齎す故に検索毎に課金する、と云う理屈から云えば、ユーザーの絶対数が少ないサービス開始時には利用料を下げるべきです。
そうでないと、ユーザー数が増えれば利用料が値上がりする、と考える方が理に叶うのです。
上記から考え、明らかに詭弁であろう事が分かるのですから、信頼性云々を口にするのはお門違い、と云えます。
端から、過去記事の再販サービスです、と云い切ってしまった方が納得が行きます。
尤も、得心したので使います、とは云えませんが。
既に日経テレコン21やG-Searchと云う既存サービスがあり、同コンテンツで後発となるキジサクがシェア争いする為には「思い切った価格」ぐらいでしか勝負出来ない事ぐらいマーケティングを知らない方でも分かる筈です。
そして、思い切った価格とは、キジサクが予定している様な設定料ではなく、インパクトのある価格を示すべきなのです。
例えば、既存サービスが定額従量制であるのであれば、定額制にするか従量制にでもしなければ、ユーザーにはピンと来ません。
これは安い、と思わる事が出来ない価格設定では「思い切った価格」とは云えません。精々、サービス提供側の自己満足、としか受け取れません。
B2Bでは限界があるとは云え、もう少し中小IT企業の新サービスリリース際のPRを勉強された方が良い、と思われます(大手が真摯にこれを勉強されると中小企業では太刀打ち出来なくなってしまいますが)。
勿論、価格だけで勝負しては赤字に成り兼ねませんから、普通は既存サービスには実装されていない独自コンテンツを用意すべきです。
6月以降には、この有償DBに別会社も載るとの事ですが、データ量だけ増やした処で無用であれば使われる事はなく、信頼性のある情報、と云うあやふやなコンテンツでは意味がありません。
「ユーザー法人がプレスリリースを発信できる機能。専用フォームに入力、投稿内容をチェックした上で掲載。業種登録しておくと関連ニュースが毎日配信される。自社情報を他社に対して検索トップ画面に表示」
キジサクには上記の様なコンテンツもあるそうですが、All About プロファイル辺りと何が違うのでしょう。
そもそも、嫌、と云う程、ビジネスマッチングサイトや営業ツール、Webアプローチが存在するウェブ上で、今更売りになるコンテンツとは思えません。
他社にPR、と云う事は、有料サービスでありながら広告が表示される事を意味しており、業種等と云う幅広いカテゴリから送られてくるニュース等スパム程度にしか思えません。検索トップページに表示されるPR、と云うものは、コストが発生しないのであるとしたら、そのアルゴリズムはどうなっているのでしょうか?
携帯電話程度の値段とは云え、明らかなコンテンツ不足では、1円でも高い、と云わざるを得ません。
寧ろ、優れたコンテンツを揃えておけば、多少既存サービスより高くても検討する余地は充分有り得ます。
何故、殊更上述の様なサービスがインターネット上で必要なのでしょうか?或いは、必要とされている、と思い込んでいるのでしょうか?
そもそも、ニュース記事の再販、と云う概念そのものが疑問です。
残念ながら、この様なサービスを提供しようとしている時点で、インターネットの特性を履き違えています。
Weblogが何故、これ程広がり、SNSやSBMにユーザーが集うか、研究が足りないのではないでしょうか。
インターネット上では、情報に対し熱し易く冷め易く、移ろい易く、虚偽情報も沢山あり、信頼性があるとは云い難いです。しかし、マス・メディアにも過熱報道やメディア・コントロールがあります。
マスによるネットとの対立図、これを払拭する事が出来ないければ、新聞社は衰退の一途を止める事は出来ない様に思えます。
願わくば、ユーザー自身が欲しがる様なサービスを提供して貰いたいものです。
情報を“閉鎖”しないで貰いたいものですね。

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